夏といえば、夏目漱石の「こころ」?
言わずと知れた夏目漱石の「こころ」、漱石の作品の中では多分一番読んだ回数が多い。
漱石といえば、「坊ちゃん」、「我輩は猫である」が読みやすくて人気が高いような・・・
こころを始めて読んだのは高校生の頃ですが、半分以上はよくわかってなかったと思います。
それから何回読んだろう。
漱石の文体が好きなんですよね、派手に煽るようなものでなく、シンプルで平易だけど、色々なことを感じさせるような、無理してないっていうんでしょうかね。自然に情景が感じられるというか。
主な登場人物は、
・学生である私
・先生(学校の先生というわけでなく、ただ私が勝手にそう呼んでいる)
・先生の奥さん
・先生の学生時代の親友であるK
こころは構成が面白くて、主人公の私(学生)の一人称と先生の手紙の部分と別れています。
読者は、この「私」の目線から先生に触れ、色々な謎や、先生の人物に考えを寄せて、一体この人何者なんだろう?何を考えているんだろう?というふうに思いを巡らせます。
その返答のような形で、先生からの手紙を「私」の視点から読むような感じになっています、読者である私たちは知らず知らずのうちに「私」に身を置いて「先生」という人物に出会う事ができるといった方がいいでしょうか。
最初の出会いのシーンはなんてことないです、鎌倉の海に泳ぎに行ったら、その当時珍しいであろう外国人と一緒にいて、海を泳いでいる一人の男が気になった、どこかであった気がする、それが「先生」であった・・・というだけなんですね。
今の時代こんなことってないかな?
気になったからといって追っかけて話しかけたりしませんよね、知り合いでもないのに。人に対する関心が、今よりあるというか、いい時代だなって思います。
「私」は「先生」を追いかけるようにして海に飛び込みます、しばらくくっついて泳いでいると、先生の方から話しかけてきます。
そこから「先生」との交流が始まります。
そして、ひとつの人生に出会うことになる。
「先生」はあなたのことは知らない、と言いつつも「私」を跳ね除けることもありませんでした、若くて好奇心のある「私」はこの人は面白そうだっていう関心から、何かしら学び取ろうとするわけです、それで「先生」と呼ぶことになる。
「果たしてこの人物は何者だろう?どんな経験を蓄えているんだろう?」という何気ない好奇心から、この物語は始まるわけです。人を知ろうとするの純粋な好奇心。
漱石の探ろうとした、関心そのもののような気もします。
日本が海外の文化に触れ、私という概念が生まれてきたそんな時代に生まれたひとつの小説。
人が人を知ろうとする小説。
日本人らしい繊細さで、人間の心の揺れ動きを捉えようとしている漱石は、そこに一体何を見ようとしたのでしょうか?
何度読んでも興味のつかないこの小説は、何か大切なものを抱え込んでいるような、そんな魅力があります。
内容は重いところもありますが、当時の日本の空気を味わう事もできますので一見の価値ありです。
「こころ」とは一体何か?
そんなことを考える時間を持つのも、時には大事なのかなと。
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