是枝監督新作映画 万引き家族レビュー(ネタバレ有り
監督
引用
少し前に映画館で是枝監督最新作の万引き家族を観てきた。
是枝監督の作品は「誰も知らない」以降チェックはしていなかったのだけれど、ふと立ち寄った映画館で、時間もちょうど良かったので観てみることにした。
結論から言うとすごい映画だと思った。
映画は冒頭、見るからに金のなさそうな親子の柴田治(リリー・フランキー)、とその息子祥太(城桧吏)が万引きをする所から(たしか・・・)始まるのだが、その帰りに家族に家庭内暴力を振るわれている少女ゆり(北条じゅり)を見つけ、置いておけず家に連れて帰る所から始まる。
引用
是枝監督が『万引き家族』で描こうとした世界 「多様な人がいるのが自然で、その方がいい」
家に帰ると、そこには雑多に暮らした家族がいるのだが、種を明かせばこの家族、誰も血が繋がっていないのだ。
これは映画のクライマックスで明かされていく事なのだが、観る側は一抹の疑問を抱えて,映画の後半までそれを知らずに観て行くことになる。
家族は其々に過去を持っているが、家にいる時はまるで本物の家族のように過ごしている、そこには貧乏でもみんなで暮らせれば楽しい、支え合っていこうという美観が垣間見えるが、これは「力の無い、社会の端で隠れながら生きざるを得ない人達の寄り集まり」なんだと思った。
恐らく映画を観ている人達は、万引きという犯罪に抵抗を感じながらも、そうやってでも生きていこうとする登場人物達に同情と憐憫(共感?)を覚えて行くだろう。そしてなにより本物の家族らしく在ろうと、互いの繋がりを確かめ合う姿に、ある羨望を覚えるのではないだろうか?
そういった気分が高まったところで、映画は急展開を見せる。
祥太がゆりを庇って(万引がバレそうになり、祥太がオトリに自らなる)警察に捕まってしまうのだ。
逃げようとした祥太は道路のガードを乗り越えようとして転落、警察に捕まり病院にはいり、そこで事情聴取を受ける事になる。
祥太が捕まったことを知った柴田家は(すいません、何で知ったのかは忘れてしまいました…)夜逃げをしようとするが、家を出ようとしたところを警察に捕まってしまう。
ここで家族達の真実が白日の下に明かされていく、柴田は痴情の縺れで人を殺した殺人犯であった。
亜紀(松岡茉優)は初枝(樹木希林)の旦那の不倫相手?の孫娘であった。(うろ覚えです…)
引用
祥太、ゆり、亜紀、は警察伝いにそれらの真実を伝えられる事になり、其々の居るべき場所に戻されていく。祥太は保護施設へ、ゆり、亜紀はもとの家族の家へ。
信代(安藤さくら、柴田治の相方)が事情聴取の中のシーンでこう言っていたと思う
「私たちは盗んだんじゃない、誰かが捨てたものを拾ったんだ」
これは観るものに向けられた言葉だと思った、果たして彼らは本当に「悪いひとたち」なのだろうか?
生きる事に必死で、誰かとの繋がりに貪欲な彼らを、私たちは罰することが出来るだろうか?
社会が降した判断は正しかったのだろうか?
常日頃表面的にしか報道されない犯罪や事件に「ああ悪い人が捕まって良かった」と安堵している私達は、本当にそれだけでいいのだろうか?
あらゆる複雑なテーマが提示されたこの映画を観て、私は自分の事を省みた、そして同時に、今目の前にいる人を大切にしたくなった。
家族とは血なのだろうか?人間の繋がりはもっと違う所でも生まれる事があるんじゃないか?
ネットの広がりによって稀薄になって行く生身の遠い繋がりを、私達はもう当たり前のように受け取っている、
その反動がどういった形で社会に現れてくるのか、私には想像もつかない。